「課長に昇格するくらいなら、会社を辞めて転職します!」
日頃はアチコチで“課長に対するグチ”を言っていたのに、自分が課長に昇格するのを青い顔で辞退したK係長のことは20年以上経った今も忘れられません。
この記事でわかること
上司への不満が度を越すと・・・
K氏はベテラン係長。
直属上司であるA課長の仕事の仕方が気に入らず、同僚と酒を飲んでは「自分だったら、あんなやり方は絶対にしない!」と愚痴を言っていました。
“課長に対する愚痴”は徐々に“課長に対する不満”に変わり、ついにはA課長本人に向かっても反論するようになってしまいました。
K係長の業務に対する部門評価はかなり高く、直属上司であるA課長の評価も標準以上で、悪い評判はありません。
ただし部下であるK係長が、あちこちの部署で批判を繰り返していたため、A課長はK係長に直接注意をし、手を焼いていたようです。
結局このときは、所属部門の部長から「厳重注意」をして本人に反省を求め、K係長も自分の「やり過ぎ」を認め、その後はおとなしくしていました。
課長に昇格するくらいなら、会社を辞めて転職します!
そんな事があって半年以上経った3月、K係長は青い顔をして人事部に駆け込んできました。
部門長から「課長昇格」の内示を受けたのです。
なんと彼は、その場で辞退したと言います。
真っ青な顔をしたK係長は
「あんなに責任の重い課長の役職は、私にはできません。」
つい先日まで「自分だったら、あんなやり方は絶対にしない」と課長への不満を声高に話していたのと同一人物です。
「人事から部長を説得して、自分の昇格を取り下げてほしい」というのです。
K係長は、自分が課長に昇格する段になって「あんなに責任の重い課長の役職は、私にはできません。」と言ってきたのです。
※ 当時、私が勤めていた会社の社員数は約20,000人。課長昇格は、飛び上がって喜ぶ人もいたほどでした。
上司の不足に気づくのは「健全」なこと
もちろん、K係長のように、あちこちで声高に話すのはよくありませんけどね。
“部下が上司の不足に気づくことは「健全な成長だ」”に違和感がありますか?
係長が新任であれば、上司への不満も少ないものです。
係長は自分の仕事で手一杯ですから。
上司の不足に気づくというのは「部下が上司と同じ視点に立って業務を考えていること」の現れです。
上司の不足分を補ってサポートする、という形で発揮されれば、上司の“右腕”になる力が既に備わっているということ。
ベテラン係長だったK氏は、自分が担当する業務範囲については熟知しており、A課長より知識がありました。
自分の担当分野からの視点のみで課長を批判していたのです。
自分が課長に昇格することになったときに初めて、
・課長の守備範囲の広さ
・課内の業務全てに対する知見と現状把握が必要なこと
・他部門との交渉力も要求されること
にあらためて気がついたのでしょう。
しぶしぶ昇格して名課長に!
結局、K係長は周囲に説得され、もちろん家族にも後押しされて課長昇格を受け入れました。
課長となったK氏はもちろん職責をキチンとこなし、すぐに頭角を現して、後に「名課長」と言われるほどになりました。
「自分だったら、あんなやり方は絶対にしない!」と言っていただけのことはありますね。
昇格候補者は「いちかばちか」では決めない
K係長は、課内の複数の係で係長を経験していました。
上司に対する不満は、その実力があったから出たのでしょう。
昇格者を決める際、会社は「いちかばちか」では決めません。
周囲に、「この人なら課長(部長)の職責をはたせる」という確信があって初めて昇格候補者となるのです。
今の会社の「社内でスキルを磨く」という選択肢を忘れていませんか?
課長や部長への昇格を目指すなら「ひとつ上(昇格したい役職)の視点」でものを見たり、考えたりすることを習慣としましょう。
上司の決定と比較して「答え合わせ」をして自分のセンスを磨くのです。
そして少しずつ「上司の右腕」としての提案ができるようになれば、実力もつくはずです。
人事部長のまとめ
・上司の不足に気づくことは部下の「健全な成長」
・上司をサポートすれば“右腕”になれる
・自分が昇格するときに初めて職責の重さに気づく
・昇格は周囲に確信があって初めて候補者となる
・社内でスキルを磨く選択肢もある